スーツというと上流階級の人々が着用する紳士服という認識があるかもしれませんが、実はスーツはもともと農民の作業着が起源と言われています。その後、形を変えながら軍服やオフィスの一般着として世間に広まってきたメンズスーツは、ビジネスシーンやメンズファッションに欠かすことができません。メンズショップやメンズスーツの紳士服通販サイトでも多くのタイプのスーツが販売されています。そこで、今回は改めてスーツの基本種類からボタンの留め方などについて、1つずつ詳しく解説していきます。
メンズスーツの基本デザインと組み合わせ
スーツの基本種類はシングルとダブルの2種類、組み合わせが2種類となります。スーツの種類を使い分けることで、社会人らしい清潔感のあるコーデがしやすくなります。順にスーツの種類について見ていきましょう。
ビジネスからビジカジまで幅広く使われる「シングル」
シングルは、ボタンが1列に並んだタイプのデザインで、オフィスでも良く活用されているスーツデザインです。ボタンが2つや3つのタイプがあり、ボタンが3つのタイプは、Vゾーンの面積を小さくすることで、きちんとした印象にまとめやすく、身体も引き締まって見える効果が得られます。メンズショップや通販サイトでも多く見られるスーツタイプで身長が高い方に特に合うデザインとなっています。
体型補正してスタイルアップにも役立つ「ダブル」
ダブルは、ボタンが2列に並んだタイプのデザインで、前身ごろ(衣服の前側)がしっかりと重ねられることから体型カバーがしやすく、体格の良い方やシニアの方などに好まれるデザインです。最近は、レトロブームが高まっている風潮や、スタイルアップして見えやすいということから、若い方にも注目されるスーツデザインとなっています。
スーツの組み合わせ①スマートなスーツコーデがしやすいツーピース
ツーピースは、いわゆるセットアップとしてトップスとパンツを上下同じ素材で着られることから、統一感を出しやすく、品が良い印象に仕上げられます。ビジネスシーンにもピッタリで、年代問わず着用できるスーツの組み合わせです。
スーツの組み合わせ②フォーマルなシーンにおすすめのスリーピース
スリーピースは、ツーピースにベストを組み合わせたフォーマルな組み合わせになります。お腹周りにベストがあることで着やせ効果が得られ、年配者の方に愛用者が多いスーツでもあります。ベストとジャケットのカラーコーディネートが楽しめるということもあり、最近はメンズファッションにこだわりを持つ若い方にも人気です。
メンズスーツのバックシルエットを左右するベント
「ベント」はジャケットの裾の切れ込み(スリット)のデザインを指します。スーツの後ろ姿のイメージがベントのデザインによって異なってくるので、スーツのデザインにこだわりたい方はベントの種類についても詳しく知っておくと良いでしょう。一般に使われるタイプから機能を重視したタイプ、フォーマルなシーンで使われるタイプのベントについて1つ1つ説明していきます。
迷ったらスタンダードな「センターベント」
画像はテイジンメンズショップ(TEIJIN MEN’S SHOP)のシングル3つボタン段返りジャケット ブラウン
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「センターベント」は、ジャケットの中央部分の裾にスリットが入った裾デザインを指します。最もスタンダードなタイプで、中央にスリットが入っていることで動きやすく、スタイリッシュな印象に仕上げられるのが特徴です。
馬の乗り降りをするために生み出されたデザインと言われており、動きを妨げずスムーズに行動しやすいことからスタンダードなジャケットの裾デザインになりました。現在の一般的なスーツに多く採用されており、スリムシルエットのスーツを好む方にもおすすめとなっています。
ただ、短め丈のジャケットの場合は「センターベント」だと、左右に広がるデザインとなるため、体型によってはバランスが取りにくくなる場合があります。試着した際に後ろ姿もしっかりチェックしておきましょう。
ヒップをカバーして動きやすい「サイドベンツ」
「サイドベンツ」は、ジャケットの左右の裾にスリットが入った裾デザインを指します。背中の中央から左右に割れて広がらない分、ヒップをカバーしやすく体型カバーに役立ちます。
伝統的なデザインのスーツのデザインに採用されることが多く、落ち着いた印象にしやすいでしょう。サイドベンツの起源は、英国の騎士が脇に下げた剣を扱いやすくするために生まれたデザインと言われており、英国スーツとの相性も良いのも特徴です。スリットが2つあることで動きやすさも向上します。
体型カバーしながら落ち着いた印象になる「ノーベント」
ジャケットの裾にスリットがないデザインを指します。タキシードなどフォーマルなジャケットに多く採用されており、結婚式やパーティーなど改まったシーンに適応しているデザインです。激しく動くことを想定していないデザインとなるため、落ち着きのある印象になります。また、スリットが無い分、ヒップをカバーできるメリットもあります。
足元の印象を変えるメンズスーツの裾上げ
お店でスーツを購入した時に、メンズスーツのパンツの裾上げを頼むことがあるでしょう。その際に「シングル」か「ダブル」のどちらかを選ぶことになりますが、好みだけではなく、目的によってオーダーを変えているでしょうか。裾上げの仕上げによって脚長効果が得られたり、全体のシルエットのアクセントにできたりとメンズスーツの印象も変わってきます。全体の印象を変える1つとなる裾上げの種類について順に見ていきましょう。
幅広いシーンで使える「シングル」
メンズスーツのパンツをスッキリと見せるなら、折り返しをしない仕上げの「シングル」がおすすめです。折り返し部分が無いことで、スラリとした脚長効果が得られます。ビジネスシーンや、フォーマルなシーンでも使いやすく対応しやすい裾の仕上げとなります。
ただ、たるみが出ると垢抜けない印象になるので、実際に靴を履いて丈を確認してみると良いでしょう。ちなみに、英語ではシングルを「plain」と呼びます。
洒落た雰囲気にできる「ダブル」
メンズスーツのパンツの仕上げで人と差をつけたいという方には「ダブル」の仕上げがおすすめです。折り返しを作ることで、こなれた印象にすることができます。特にクラシカルなボックスシルエットの英国スーツのような場合は、パンツの裾を折り返した「ダブル」との相性も良くおすすめです。
折り返し部分の幅は、3.5cm〜4cmがスタンダードで、最近は4.5〜5.5cmの幅広タイプの折り返しもトレンドとなっています。折り返した部分は崩れないように、ホック留めか糸で縫い付けますが、海外ではスマートに見える糸留めが主流です。ただ、洗濯などの際にお手入れがしやすいのはホック式となります。目的や好みで選ぶと良いでしょう。
また、「ダブル」を選択した場合は、ややカジュアルな印象となりやすいため、ビジネスシーンでの着用する際は職場の雰囲気を考えて取り入れると良いでしょう。英語でのダブルは「turn up」と呼ばれています。
メンズスーツのボタンルール
スーツのジャケットを着る際に、1番下のボタンを留めない「アンボタンマナー」は社会人の常識として広く浸透しているでしょう。では、ボタンの数によってどこを留めてどこを留めないかについて把握しているでしょうか。ジャケットの種類×ボタンの数の組み合わせから留めるべきボタンについて順に確認していきましょう。
シングルジャケットでボタンが2つの場合
シングルジャケットでボタンが2つの場合は、1番上のボタンのみを留めます。下のボタンは装飾として付いており、留めてしまうと動きの妨げになりやすくなるほか、スーツのジャケットにシワが寄って着崩れの原因となります。ちなみに、ダブルスーツの場合は横にボタンが並んだデザインとなっており、両方ボタンを留めて着崩れを防ぎます。
シングルジャケットでボタンが3つの場合
シングルジャケットでボタンが3つの場合は、上と中のボタンを留めて一番下のボタンは留めません。ボタンが3つ付いていることで、ジャケットのVゾーンが狭くなり、全体的に引き締まった印象になります。着やせ効果が欲しい方は、シングルジャケットでボタンが3つあるタイプを選ぶと良いでしょう。
シングルジャケットでボタンが下襟の裏にある場合(3つボタン段返り)
シングルジャケットで下襟(ラペル)の裏にあるボタンを含めてボタンが3つある場合は、真ん中のボタンのみを留めます。下襟(ラペル)の裏にあるボタンは飾りボタンとなり、1番下のボタンと同様に装飾の意味合いを持ちます。
ダブルジャケットで4つボタンの場合
ダブルジャケットの時は、飾りのボタンなのか留めるべきボタンなのかボタンの数が増える分、判断しにくいと感じるかもしれません。ですが、ある法則に則って考えると簡単に覚えられます。順に見ていきましょう。
片側のボタンの1番上だけ留める
ジャケットの前身ごろの重なった部分にあるボタンが1つある場合は、そのボタンを留めます。また、ボタンが縦1列に並んでいる場合は、上部のボタンのみ留めて下のボタンを外す着方もあります。抜け感やカジュアル感を出したい時におすすめです。
片側のボタン2つを留める
ジャケットの前身ごろの重なり部分にボタンが縦1列に並んでいる場合は、基本的に2つともボタンを留めます。縦1列のボタンを留めることでスッキリとした印象になります。
ダブルジャケットで6つボタンの場合
ダブルジャケットにボタンが6つ付いたタイプもあります。4つボタンに比べてボタンの数が多い分、装飾性が強く華やかな印象になるジャケットです。
片側のボタン3つのうち1番下のボタンを留める
ジャケットの前身ごろの重なり部分にあるボタンが1つの場合は、重なり部分にあるボタンを留めます。上2つのボタンは上に行くほどやや外側にボタンが縫い付けられているデザインとなるため、留めるためのボタンではなく装飾の意味合いを持ちます。
片側のボタン3つのうち真ん中と1番下のボタンを留める
ジャケットの前身ごろの重なり部分にあるボタンが2つある場合は、縦1列に並んだボタンは全て留めます。ジャケットの前身ごろの重なり部分にあるボタンが3つある場合も、縦1列に並んだボタンは留めます。
上部のボタンがやや外側に付けられている場合は、装飾の意味を持つため留めません。ただ、前身ごろの重なり部分にあるボタンが2つある場合、最近は1番下のボタンは留めずに抜け感やカジュアル感を出す着方もあります。状況に応じて調節してみると良いでしょう。
まとめ
今回、メンズスーツの着こなし方と基本スタイルついて詳しく解説してきましたがどうでしたでしょうか。メンズスーツの種類から、ベントや裾上げの種類、ジャケットのボタンの留め方などについて改めて確認することで、スーツの着こなしに自信が持てなかった方も自信を持って着用できるようになるのではないでしょうか。今回の記事がお役に立てば幸いです。