「紳士」という言葉を聞くと、正力松太郎氏の「巨人軍は常に紳士たれ」という言葉を思い浮かべる方もいるでしょう。「紳士」とは、品行方正で信頼に値する行いを身につけている人を指しており、紳士が着る紳士服は礼儀を示す服装ということに繋がります。現在では、紳士服はメンズ向けのスーツを示し、デパートなどでの購入のほか、手軽に通販サイトでも購入できるようになってきました。そこで、今回は紳士服のルーツからスーツの本場であるイギリスやイタリア、アメリカのそれぞれのスーツの特徴やスタイル、マナーについてスーツ選びの参考にできるように詳しく解説していきます。
紳士服を知る
「紳士服」というと漠然と男性が着る洋服というイメージでしょう。では、「紳士服」はいつごろどこから生まれたものなのでしょうか。「紳士服」の定義や「紳士服」の起源について改めて振り返ってみます。
紳士服とは
「紳士服」とは男性が着用するメンズの洋服を示しており、現在では一般的にスーツを表す言葉として認識されています。ビジネスで着用する一般的なスーツから、結婚式で着るようなモーニングコートやタキシードといった礼服などまで幅広く「紳士服」と称されています。
紳士服の歴史
「紳士服」は、主に軍服が起源と言われています。19世紀は産業革命など世界各地で争いが起きており、軍服が制服として広く浸透する世の中でした。ちなみに、日本は明治維新の時代にあたり、富国強兵を押し進めている最中でした。やがて、戦争の終焉を迎えるとともに軍服は時代の流れに合った着用しやすいデザインへと進化し、現在のスーツが生まれたとされます。
紳士服の主なアイテム
「紳士服」の主なアイテムは、ジャケット(背広)・パンツ(トラウザー、スラックス)の2点セットのコーデが一般的に認識されているスーツにあたります。ベストを合わせた3点セットコーデのスリーピースもあり、スーツやスリーピースにワイシャツやネクタイ・革靴を合わせたスタイルが「紳士服」の主なアイテムとなります。
世界3大スーツとは
それでは、次に世界3大スーツと言われるイギリス・イタリア・アメリカのスーツについてそれぞれのスーツの成り立ちやスタイル、マナーなどについて見ていきましょう。
英国(イギリス)のスーツ知る
英国(イギリス)のスーツの始まりは、農民が着用していた「フロック」と言われる長い丈の農作業着や外出着が由来とされます。やがて上質な生地を使用した人々のおしゃれ着から軍服へと変わっていき、現代のスーツへと変化を遂げました。
英国(イギリス)のスーツ概要
イギリスのスーツの特徴となるのが生地でしょう。イギリスは暖かいメキシコ湾流と北極圏から流れ込む冷たい空気がぶつかるため、常に霧が発生しやすく雨が降りやすいという気候です。そのため、洋服はシワを防ぐ地の厚いしっかりとした生地が好まれるといった背景があります。経糸と横糸をしっかりと編むことで生地の厚みが出てくるため、型崩れしにくく耐久性に期待が持てます。
英国(イギリス)のスーツスタイル
英国(イギリス)のスーツスタイルとは、肩部分にパッドを入れてウエストを細めにすることで、スタイル良く見せる独自のスーツのデザインを示します。身体に適度にフィットするスーツラインで、きちんとした感じの印象にしやすく、グレーを中心にしたスーツスタイルが基本です。上質な生地を使用したツヤのあるイギリススーツは、世界からも評価が高く、紳士を彷彿とさせる気品が感じられるスーツとして根強く人気があります。
英国紳士服のマナー
英国紳士服のマナーですが、紳士たる礼儀正しい振る舞いが大切とされるイギリスでは、スーツの着こなしも気品を求められます。きちんとした装いは人物の信頼を図る物差しとして学校時代から厳しく指導されることから、スーツも着崩したラフな装いではなく、ベストを取り入れたり、ダブルスーツを日常的に取り入れたりと品の良さが求められます。
気を付けるべき点は、座る時以外は前ボタンを留める、グレーなどの深みのあるカラーを選ぶ、シーンに合わせたスーツを選ぶといった点に注意します。また、インナーであるワイシャツの面積はなるべく見せないといった気遣いも必要です。
イタリアスーツスーツを知る
イタリアスーツは、イギリスを訪れたイタリア人が自国に持ち帰り独自のイタリアンスタイルと言われるスーツに仕上げたと言われています。イギリススーツに比べ、イタリアの気候とイタリア人の嗜好に合わせたオリジナルのスーツは、柔らかい生地を使用した着心地が特徴です。
イタリアのスーツ概要
イタリアは地中海性気候のため、夏は雨が少なく乾燥しているため、ジメジメと湿気を感じる日本の夏とは異なります。冬は降水量が増えるため、比較的過ごしやすくなりますが、日本に比べて緯度が高いため、気温がかなり低くなります。また、朝夜と昼の寒暖差が大きいため、気温に合わせて脱ぎ着しやすいスーツや、軽量性など快適性が求められるスーツデザインが求められます。
イタリアのスーツスタイル
イタリアのスーツスタイルとは、イギリスのスーツスタイルに比べてリラックスして着やすいデザインと生地が特徴として見られます。「ファッションの国」として楽しむことを意識したスーツデザインで、湿度を意識する必要もあまりないことから生地も柔らかく薄いものを使用するなど着心地やおしゃれな見た目を優先したものが選ばれる傾向にあります。肩のシルエットはパッドを入れないナチュラルなラインで、Vゾーンは深くすることで適度なセクシーさを演出しています。ウエストは絞ることで全身をスタイル良く見せるように作られています。
イタリアのスーツマナー
イタリアのスーツマナーは、シーンを考えたメリハリのある着こなしを意識することにあります。着心地やリラックス感を大切にしているとはいえど、教会など神聖な場所やレストランなどに行く場合は、露出を控えた着こなしが大切です。
逆にかしこまる必要がない場では、シャツのボタンを外して襟元をラフにしたり、ジャケットのボタンを留めないで抜け感を出したりとシーンに合わせてスーツスタイルを自由に楽しむのもイタリア流です。
米国(アメリカ)のスーツを知る
米国(アメリカ)のスーツは、ヨーロッパからスーツ文化が伝わり、20世紀から本格的に生産され始めました。オーダーメイドのつくりとは異なり、工場で大量に生産されたものが主流で、体型に関係なくどんな人にも合わせやすいスーツが作られてきました。
米国(アメリカ)のスーツ概要
米国(アメリカ)のスーツは、気候といった観点よりも身体のラインを強調しないようない緩やかなラインのスーツが作られており、「自由の国アメリカ」を象徴するように階級といった意識が反映された堅苦しいスーツデザインではありません。動きやすく誰にでも取り入れやすいスーツが主流となっています。
米国(アメリカ)のスーツスタイル
米国(アメリカ)のスーツのスタイルとは、「サックスーツ」と呼ばれるゆとりのあるシングルタイプのスーツがメインになり、ウエストは絞らずナチュラルなラインが特徴です。現在では、動きやすさと見た目のスタイリッシュさを併せ持つスーツが増えており、必ずしもゆったりしたラインのスーツばかりではなくなってきています。アメリカの有名ブランドスーツは機能性と着心地の良さからアメリカに限らず多くの方に支持されています。
米国(アメリカ)スーツのマナー
米国(アメリカ)スーツのマナーは、日本と同じくスーツにネクタイを着用する礼儀を感じられるスーツの着こなしが基本のマナーになります。ただ、広いアメリカでは西海岸と東海岸では少々、状況が異なる場合もあります。西海岸側は東海岸側に比べてラフな印象が強くなる傾向です。また、ハワイなどのリゾートの場合はアロハシャツを着用する場合もあり、相手の方に合わせたスーツスタイル選びが必要となります。いずれの国でもスーツは身体にピッタリしすぎずジャストサイズを選ぶときちんとした印象に見えておすすめです。
まとめ
今回、紳士服の起源や、イギリス・イタリア・アメリカといったスーツ三大国のスーツの違いやマナーなどについて詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか。各国のスーツスタイルが国民性や気候が関係することや、シーンを考えながら快適なスーツ選びをすることが大切だと感じられたのではないでしょうか。今回の記事が、ぜひ上手なスーツ選びの参考になれば幸いです。