みなさんは「背広」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか?
おしゃれな紳士が身に纏うクラシックなスタイルの一張羅でしょうか。
それともパリッとした生地で仕立てたビジネス用の勝負服でしょうか。
今回の記事では、そもそも背広とはどういうものか、また背広の種類を分けるそれぞれの特徴について解説していきます。
背広とは?
まずは背広がどのような服を指すのか今一度おさらいしてみましょう。
背広とは、上着(ジャケット)に加え、上着と同じ生地で作られたズボンとベストの3つをセットにした洋服のことです。
今ではベストは省かれ、上着とズボンのみを指す場合や、上着のみを背広と呼ぶこともあります。実は「背広」というのは当て字で、語源としては下記3つの有力説があるようです。
一つは「背幅が広い」上着という文字通りの意味から名付けられた説。
もう一つはロンドンの有名な仕立屋が立ち並ぶ街「Savile Row(サヴィル・ロウ)」が訛ったという説。
最後は市民服を意味する「civil(シビル)clothes」が訛ったという説です。
背広が当て字だというのは意外と知られていないかもしれませんが、いずれにしてもはっきりとした語源は定まっていないようです。
背広とスーツの違いは?
背広の定義だけ見ると「スーツ」との違いがわからないかもしれません。
一般的にも背広とスーツは同義として扱われている傾向がありますが、実際に背広もスーツも上下同じ生地で作られた洋服というのは共通しています。
両者の明確な違いは、スーツは男性用と女性用のどちらも意味するのに対して、背広は男性用(紳士服)のみを指す呼び方だということです。
なぜ女性用のスーツを背広と呼ばないかは、幕末から明治初期ごろに日本に上陸した当時の背広が男性用のみだったことが背景にあります。
西洋文化を積極的に取り入れ始めた当時、西洋でも女性が背広を着る文化がなかったため、男性用の洋服として日本に伝わったというわけです。
尚、現代では背広という言葉を使う人は減っており、スーツと呼ぶか、スーツの中でもジャケットのみを指す言葉として使われる傾向にあります。
どちらかと言えば、背広はご年配の方が使うイメージがあるかもしれません。
背広の種類
背広には、見た目の印象や適切な着用シーンを分けるいくつかの特徴があります。
- ボタンの並び方と数
- 生地の柄と色
- ラペル(下襟)
- ベント
- ツーピースとスリーピース
ここでは、上記5つの特徴についてそれぞれ解説していきます。
ボタンの並び方と数
背広はボタンの並び方によってシングルとダブルに大きく分かれます。
シングル
シングルはボタンが縦一列に配置されていて、背広と言えば真っ先に思い浮かぶ定番のスタイルです。
ビジネスシーンから冠婚葬祭までほぼどんなシーンでも着ることができます。
着用する際には、縦に並んだ一番下のボタンは常に外しておきましょう。
ダブル
ダブルは前ボタンが2列になり、ボタンを留めたときにジャケットの前側が重なるタイプのデザインです。
シングルと比べてクラシックなスタイルとなり、重厚感のある印象を与えるため一般的なビジネスシーンというよりフォーマルな場で着用されます。
ボタンの数
ボタンの並びに加えて数でも印象が変わります。
シングルなら縦に2つ並んだ2つボタンが定番で、3つボタンは胸元まで締まって見えるのでよりカッチリした印象になります。
現在の3つボタンは上2つのボタンを留める通常の3つボタンではなく、下襟部分に装飾の意味合いでボタンホールが付いている「段返り3つボタン」が主流になっています。
段返り3つボタンでは一番上と一番下のボタンは外しておき、真ん中のボタンのみを留めます。
ダブルの場合は縦横2列にボタンが並ぶ4つボタンと、さらに縦に一つずつボタンを加えた6つボタンが主流です。
4つボタンは上のボタンのみ、6つボタンは真ん中のみまたは真ん中と下のボタンを留めるのが基本形ですが、Vゾーンの広さで印象を変えるために、あえて6つボタンで一番下のみ留めるなどの着こなしテクニックも存在します。
生地の柄
続いて生地の柄による違いも見ていきましょう。
無地
最もオーソドックスな無地の背広はビジネスシーンのみならずどんなシーンでもフィットする定番アイテムです。
無地であるメリットとしては、着用シーンを選ばないことのほかに、シャツやネクタイなどのほかのアイテムとのコーディネートを楽しむことができる点もあります。
ストライプ
ストライプ柄もビジネスシーンでよく見られる柄で、華やかさと上品さを併せ持っています。
同じストライプでもいくつか種類があり、光の当たり具体や角度で線の見え方が変わる「シャドーストライプ」や、一般的なストライプよりも線の主張が強く、カジュアルな印象を与える「ペンシルストライプ」や「チョークストライプ」などがあります。
チェック
チェック柄は親しみやすさや温かさ、カジュアルな雰囲気が特徴で、どちらかといえばビジネスシーンではあまり見られない柄かもしれません。
シャドーストライプと同様にさり気ない柄の主張を楽しめる「シャドーチェック」のほか、英国の伝統的な柄で、上品さや知性的な印象を与える「グレンチェック」、大きな格子柄がカジュアル感や親しみやすさを演出する「ウィンドウペン」などがあります。
チェック柄の背広を着る際には、シャツやネクタイはシンプルなものを選ぶとバランスが良くなるでしょう。
ラペル(下襟)の形と幅
ラペルはまずサイズによって「レギュラーラペル」「ナローラペル」「ワイドラペル」の3つに大きく分かれ、細くなればなるほどスタイリッシュな印象に、太くなればなるほどクラシカルで落ち着きのある印象を与えます。
また、形状によって名称が分かれており、代表的なのは上襟と下襟との間に均等なV字が入る「ノッチドラペル」です。
市販されている多くの背広はこのノッチドラペルが採用されていますが、フォーマルシーンなどでより華やかな印象を与えたい場合は、タキシードなどでも採用されている「ピークドラペル」がぴったりです。
また、ノッチドラペルよりも下襟の先が少し上向きになっている「セミノッチドラペル」はビジネス向けにちょっとした遊び心を加えたい場合におすすめです。
ラペルについては以下の記事でも詳しく解説しています。
ベント
ベントとは、ジャケットの後ろに入っている切れ込みのことです。
裾の中央に1本切れ込みが入っている「センターベント」が最も一般的です。
少しゆったりとしたシルエットの「サイドベンツ」は動きやすさが特徴で、センターベントよりもクラシックな印象を与えます。
また、礼服などの冠婚葬祭用の背広では、切れ込みが入っていない「ノーベント」が採用されている場合も多いです。
ツーピースとスリーピース
最後に、背広にはツーピースとスリーピースという2つの組み合わせがあります。
ツーピースはジャケットとスラックスの2点セットで、スリーピースはそこにベスト(ジレ)が加わります。
スリーピースはツーピースと比べてフォーマルな印象になり、防寒性の高さやジャケットを脱いだ状態でもおしゃれに見えるというメリットがあります。
ベストを着用する場合は、ジャケットのボタンは全て外して着用するのがマナーです。
まとめ
今回は、背広の種類やそれぞれの特徴を紹介してみました。
背広は柄や形状の組み合わせで何通りものおしゃれさを演出できるファッションアイテムです。
今回の記事を参考に、着用シーンに合わせてぜひ組み合わせも楽しんでみてください。
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