春が近づいてくると、軽やかさがある着こなしをしたくなります。シャツを取り入れたコーデも多くなるのではないでしょうか。シャツを活用することが増えると、気になるのがシワ。シャツはピンとしたハリ感が魅力でもあるアイテムです。そこで今回は、イージーケアとはなにか、加工方法、形態安定や形状記憶との違い、イージーケア素材の種類、利点や弱点などについて詳しく解説&紹介をしていきます。
イージーケアとは?
イージーケアは、名前の通りお手入れが簡単で手間がかかりにくい加工です。どんな特性があるのか見ていきましょう。
家で洗濯できる
まずは、家で洗えるというのが前提になります。洗濯機や手洗いで簡単にお手入れができれば、クリーニング店に依頼する必要もなくなります。
シワになりにくい
シワになりにくい加工がされているから、洗濯の際のシワも気になりません。また、長時間着用しても、折りジワや座りジワなどが防ぎやすく着用時のストレス軽減を目指せます。
アイロンがいらない
基本的にアイロンはいらない、というのもイージーケアの魅力です。アイロンをかけるとなると、水の用意やアイロン台の設置など、アイロンのための準備もなかなか面倒です。
シワがよらないように部分ごとに気を配ってアイロンがけするのも手間でしょう。ですが、アイロンなしで着用できるならば、時間も手間も省略できます。
色落ちしにくい
ポリエステルやアクリルといった化学繊維は、コットンやリネンなどの天然繊維と比べて色落ちしにくいことが知られています。
これは色素が分子レベルで浸透していることや、高温による加工のため一般的に使用する限りは、色素が抜ける環境にはならないことが色落ちしない理由とされています。よって、イージーケア加工は色持ちが良いということになります。
イージーケア加工とは?
イージーケアは、洗濯した時に手間がかからないように加工したものや、素材そのものを工夫したものを指しています。どんな特性があるのか詳しく見ていきましょう。
合成繊維が主体
イージーケア加工する素材として使用されるのは、ポリエステルやナイロン、アクリルなどの合成繊維が主体となります。ちなみに、合成繊維とは化学繊維とではなにが違うのだろうかと気になるかもしれません。
合成繊維は、石油を主原料にする化学繊維を指しており、化学繊維の一種です。化学繊維の中には木材パルプやコットンの種毛を使用した天然繊維を含む繊維もあります。
化学繊維は、耐久性や耐水性という特徴を持ちます。丈夫であるということは、反発性を持つということでもあります。反発性があることで、繊維が絡みづらくシワになりにくいのです。合成繊維を使用した生地、例えばポリエステルとコットンなどの混紡生地のイージーケアアイテムは多く見られています。
薬剤による加工もされる
上記で合成繊維を混紡した素材などによるイージーケア加工について説明しましたが、イージーケア加工されたものの中には、コットン100%という生地もあります。
これは、薬剤による加工がされており、コットンの風合いを活かしながらシワができにくい生地になるように作られています。イージーケア加工は、形態安定加工や形状記憶加工よりシワの付きにくさで劣りますが、生地の風合いが楽しめるという特徴があります。

イージーケアと形態安定の違い
イージーケア加工は、シワになりにくいといった特性やアイロンがいらないといった特性を持たせる加工です。特別なお手入れの必要がない、イージーケア加工についてもう少し踏み込んでみましょう。
縫製後の加工である
形態安定加工は、縫製後に加工を行います。いわゆる後加工と呼ばれており、ポリエステルやテンセル、コットンなど化繊や再生繊維、天然繊維など幅広く使われる加工です。シワや型崩れを防止します。
薬品加工、樹脂加工、熱加工などあり
また、形態安定加工には薬品や樹脂、熱を利用した科学的処理による加工方法もあります。
繊維に薬剤を拭きつけたり(または浸透させる)樹脂を塗布したりしてシワや縮みを防ぐほか、高温処理することで繊維の構造を変えて柔軟性を弱めます。柔軟性を弱めることで、シワができにくい状態になるのです。
イージーケアとは薬剤の違い
イージーケアとは、基本的に使用する薬剤が異なるという点が挙げられます。簡単にいうと、薬品の作用が強いか弱いかということになります。形態安定加工は、イージーケア加工に使われる薬品よりも強い影響を及ぼし、生地が硬めになる傾向があります。反対に、イージーケア加工の方がふんわりとした自然な風合いが得られます。
イージーケアと形状記憶の違い
形状記憶という加工もシワや型崩れを防ぐ加工としてよく聞きます。イージーケア加工とはなにが違うかについて解説します。
縫製前に加工する
形態安定加工とは異なり、縫製前に加工するのが大きな違いです。生地の段階で熱を加える前加工によりシワや縮みを防ぎ、アイロンの手間が無くなるようにしています。
株式会社「東洋紡」の登録商標である
形態安定加工と共に認知されている防シワ加工ですが、こちらは株式会社「東洋紡」の登録商標です。よって、東洋紡の生地を使って作られたシャツが形状記憶シャツということになります。
イージーケアとは加工方法が異なる
イージーケア加工との違いは、生地の段階での熱処理による前加工ということになります。イージーケア加工では、熱加工による処理は行っていません。
イージーケア素材の種類
ここからは、イージーケア加工される素材の種類について紹介していきます。
天然素材
ワイシャツやドレスシャツ、カジュアルシャツなどに使われるコットンやリネンもイージーケア加工に使われる素材です。コットンやリネンは、繊維内に空洞があることでシワになりやすい素材ですが、イージーケア加工することにより、ナチュラルな風合いを活かした防シワ性を得られます。
化学繊維
ポリエステルやナイロン、アクリル、ポリウレタン、アセテートといった素材も多く使われています。ポリエステルなどの化繊は反発性があるので、シワになりにくい素材です。
ちなみに、化繊でもレーヨンやキュプラなどの化学繊維は反発性が低いため、シワになりやすい傾向があります。そのような場合は、イージーケア加工することで、シワや縮みを防ぐ加工を行います。
合成繊維
合成繊維も素材の1つです。ポリエステルやナイロンのみの100%という素材よりも、むしろ合成繊維を使用したタイプを見かけることが多いでしょう。
コットンとポリエステルという混紡素材はシャツでもよく見られる素材で、シワになりにくいことから学生服のシャツとして採用されているのも珍しくありません。
レーヨンとポリエステル、ポリウレタンといったしなやかな質感も上質なイージーケア素材として人気があります。
イージーケアの利点
イージーケアの利点についてまとめます。
復元性
とにかく、シワになりにくい復元性ということでしょう。毎日、使用するシャツなどは特に重宝する加工と言えます。洗濯してシワを伸ばして干すだけで、大きなシワを防ぎます。
速乾性
化学繊維を混紡している素材が多いため、吸湿性がコットン100%よりも低くなり速く乾きます。洗濯してもすぐに乾くので気軽に洗えます。
手入れがラク
シワができにくいということは、アイロンを使用する手間がかからないということです。洗濯機から出して形を整えて干すだけで、シワクチャにならず快適に着られます。
ストレッチ素材が多い
イージーケアアイテムには、機能性を備えたアイテムが多く見られるのも特徴です。着心地の良さをプラスすることで、動きやすさや着心地など、毎日の快適性アップを目指せます。
接触冷感などの機能付きもアリ
ストレッチ性と共に、接触冷感などの機能がついたアイテムも登場しています。暑くなってくると、少しでも心地よく過ごすためにあると嬉しい機能です。
イージーケアの弱点
イージーケアは無敵であるように思えますが、以下のような点もあるので気に留めておきましょう。
通気性や吸湿性が素材によって低い
合成繊維を使用していると、やはり天然素材そのものの生地よりも通気性や吸湿性が下がります。また、コットンなどとの混紡である場合も、割合によっては吸湿性や通気性が低い傾向です。
汗をかきやすい、蒸れをどうにかしたい、という場合は、生地素材または化学繊維の割合などをチェックしてみると良いでしょう。
毛玉になりやすい&帯電しやすい
化繊は毛玉になりやすい傾向が見られます。これは繊維が強い分、切れずに絡まりやすいといった特質によるものです。洗濯ネットに入れるなどの対策が有効です。
また、帯電しやすいので、乾燥しやすく気温が低い季節によっては静電気によるパチッとした不快な痛みなどが起きる場合があるでしょう。こちらは、洋服の組み合わせ方や静電気防止スプレーなどによって対策することができます。
防シワの効果の低下
イージーケアは永久ではありません。洗濯をするたびに、防シワの機能性は少しずつ低下していきます。シワができやすくなった、と感じた時には新しいものと交換しましょう。
まとめ
今回、イージーケアとはなにか、加工方法、形態安定や形状記憶との違い、イージーケア素材の種類、利点や弱点などについて詳しく解説&紹介をしてきましたがいかがでしたでしょうか。イージーケア加工の優れたところを知ることで、普段のコーデに生地の質感を活かしたコーデを提案しやすくなるでしょう。今回の記事が、メンズ向け通販サイトや紳士服専門店での上手なお買い物のヒントになれば幸いです。