寒い季節はもちろん、温かな陽気とは裏腹に案外冷える春先に使える裏起毛アイテムは、老若男女、年齢問わずに使える秋や冬の定番アイテムです。裏起毛アイテムは、厚手のニット素材や厚みの出やすいボアやフリースとは違って、使い勝手の良さでも人気があります。そこで今回は、裏起毛の構造について、混同されやすい裏毛との違い、裏起毛と裏毛の向く季節、取り入れ方、メンズにおすすめの裏起毛アイテムなどについて詳しく紹介&解説をしていきます。
裏起毛とはなに?
裏起毛とは、繊維を立てた状態の処理がされている状態の生地です。繊維を毛羽立たせることでどんな効果が得られるのでしょうか。順番に見て行きましょう。
1.暖かい
まずは「暖かい」ということが挙げられます。繊維を毛羽立たせることで暖かい空気を溜めやすくなります。体温で暖められた空気を留めることで、身体が冷えづらくなるのです。また、毛羽立てた処理のおかげで冷たい外気も入りにくいというのも暖かさを保ちやすくなる理由となります。
2.やわらかい手ざわり
裏起毛の加工は、生地の裏側となる面の繊維を針などで引っ張り出して一定の長さにカットしていきます。引っ張り出してカットした部分が毛羽立つからこそ、ふんわりとした質感になるのです。サラサラとしてベタつかない手ざわりを得られます。
3.軽い
裏起毛の特徴として「軽い」という点が挙げられます。ボリュームがあるように見えますが、生地の糸を引き出して加工しているため、意外と軽い仕上がりになります。薄手ではない一般的なニットなどと比較すると重さの違いが分かりやすいでしょう。
4.プリント加工がしやすい
裏起毛は、ふんわりとした生地感で適度な厚みを出せます。よって、生地の表側にロゴなどのプリント加工する時にスムーズに作業しやすくなります。プリント加工した時もキレイに仕上がりやすいと定評があります。
では裏毛とはなに?
次に、裏起毛と混同されやすい裏毛についてです。裏毛と聞くと、“毛”という文字が入っていることからなんだか暖かそうに聞こえます。実際はどうなのでしょうか。裏毛の特徴について見ていきます。
1.裏パイルとも呼ばれる
裏毛は、「裏パイル」とも呼ばれています。パイル地の一種であり、タオルやスウェットの裏側などをイメージすると分かりやすいでしょう。タオルやスウェットの裏側は、ループ状の輪になった部分が肉眼でも簡単に確認できますね。裏起毛とは明らかに異なる形状です。
2.ゴワゴワしにくい
裏毛は、肌に張り付かずゴワつかない肌ざわりが特徴です。タオルやスウェットなどもやわらかさがあります。やわらかいのは、裏側にあたる面をループ状に編み込んでいるからです。
糸が密集していていることにより、弾力が生まれるのもパイル地特有の特徴と言えるでしょう。弾力があることでシワにもなりにくい性質があります。
3.通気性が良い
裏毛は通気性が良いです。平面に比べて立体的な構造であることから表面積が増えます。表面積が増えれば、空気に触れやすくなりますよね。
また、裏毛は吸水性も高く、放湿性も良いのも特徴です。素材としてはコットンが多いですが、ポリエステルやシルクといった素材をブレンドしたものも見られます。シルク素材であれば、より吸湿性と放湿性が高まります。
裏起毛と裏毛との違い
間違いやすい裏起毛と裏毛の違いについて簡単にまとめます。
裏起毛は毛を立てた構造
裏起毛は、生地の裏側になる面の繊維を起こしてカットして毛羽立てています。そのため、暖かさが得られます。肌ざわりの良さも特徴です。素材としてはポリエステルなどが多く、コットンなどの天然繊維との混紡素材も見られます。
裏毛はシングル編み
裏毛は、シングル編み機を使用して編んだシングル編みです。コットン素材によく使われる天竺編みという平編みもシングル編みにあたります。Tシャツやニットのように横方向によく伸びるのが特徴で、通気性や肌ざわりがよいことからアンダーウェアにも使われている編み方でもあります。通気性や吸湿性がある点が裏起毛とは異なります。
裏起毛と裏毛の向く季節
裏起毛と裏毛の違いがあることから、季節に合わせた取り入れ方も多少、異なります。それぞれのアイテムの取り入れ方について説明していきます。
裏起毛は秋や冬
裏起毛は、暖かく軽いのが大きな特徴となっているので、やはり、活躍時期としては秋や冬がおすすめです。まだ、寒さが厳しくないうちはインナーに半袖Tシャツを着ても良いでしょう。よく運動部の部活動でも、秋冬の防寒対策に裏起毛トレーナーが取り入れられているのを見かけます。
寒さがグッと増したら、さらにアウターなどをプラスして防寒性をアップさせましょう。セーターなどのニット類よりもカジュアルで動きやすいのがポイントです。カジュアルスタイルにもよく合います。
裏毛は春・秋・冬
裏毛は、裏面がサラリとした質感なので春や秋にも使いやすいアイテムです。夏場でも薄手の裏毛ならば、冷房対策に使えます。保温性は低いですが、冬場は室内など暖かい状況ならば汗をかいても吸湿してくれるので、蒸れずに使いやすいでしょう。
また、作業をする必要がある方は冬場でも裏毛がおすすめです。身体を動かすことで汗が出るので吸水性に優れた裏毛が良いでしょう。さらに速乾性がプラスされていれば汗をかいても冷える心配を減らせます。
裏起毛と裏毛ではどんな着方が良いのか
裏起毛と裏毛の具体的な取り入れ方について説明します。
裏起毛は一枚でもあったか
裏起毛は、1枚でも暖かいので着ぶくれせずに着やすいのが良い点です。吸湿性は低いため、インナーを着用してから着用すると良いでしょう。Tシャツやカットソー、シャツの上にレイヤードしてみるのも◎です。
裏毛は重ね着がしやすい
裏毛は、ニットより気楽な雰囲気にしたい時やニットとは異なる雰囲気にしたいといった時におすすめです。現在、キレイめなスウェットが流行しているのもあり、裏毛アイテムはコーデに取り入れやすいでしょう。
暖かい季節ならばインナーの上に重ねたり、冬場ならばインナーとして取り入れられます。汗をかきやすい方は裏毛のインナーの方が裏起毛のインナーよりもおすすめです。
裏起毛の特徴まとめ
今回のテーマである裏起毛の特徴をまとめました。
・保温性が高い
・軽さがある
・着ぶくれしにくい
・種類が多い(アンダーウェアからトップスやボトムスなど)
裏起毛は秋冬の寒さから防寒に活躍するアイテムです。ズボン下(タイツ)など種類も豊富なので、状況に合わせて取り入れてみましょう。

裏起毛が使われるメンズのアイテム
ここからは裏起毛が使われているメンズ向けアイテムについて詳しく見ていきましょう。
裏起毛のスウェット
スウェットは、コットンやポリエステルなどの素材を使った生地、または混紡素材で作られることが多いアイテムです。
ちなみに、スウェットは英語の「sweat」という“汗”や“汗をかくための”という言葉が由来になっているアイテムで、上下セットも多く見られます。コーデに使うならば単体で使用すると初心者も使いやすいでしょう。
まだ、寒さが残るけれど、日も伸びてきて春らしいコーディネートにしたい時に、裏起毛加工されたスウェットは活躍します。トップスを裏起毛のスウェットにしてワイドパンツと組み合わせると、こなれ感あるスタイリングになります。
裏起毛のパーカー
パーカーは、フードがついた形状を活かした着こなしがポイントです。アンダーウェアの上に重ねるは着るのはもちろん、中にカットソーなどレイヤードさせるスタイルにも使いやすいアイテムです。
ちなみに、パーカーは日本ならではの呼び名でいわゆる和製英語。海外では「フーディー(Hoodie)」と呼ぶのが定番です。
裏起毛加工されたパーカーの上にストリートジャケットやマウンテンパーカーのようなカジュアルなアイテムを組み合わせると、バランスよく着られます。また、カジュアル感のあるジャケットをレイヤードさせて組み合わせてもカッコよく着られます。
裏起毛のパンツ・スラックス
裏起毛のパンツはすでに数多く売られています。裏起毛パンツでもストレッチが効いてタックが入ったものなど、見ただけでは裏起毛とは分からないパンツも多く出ています。
チノパンからスラックスなど、カジュアルからキレイめなスタイルに合わせたパンツが幅広くあるので、シーンに合わせて選びましょう。裏起毛パンツだけでも暖かいですが、まだ寒さを感じる時はズボン下(タイツ)を重ねてさらに暖かさをアップさせましょう。
裏起毛のインナー
裏起毛のアンダーウェアも数多く出ています。汗をかきやすい方や作業をする場合には裏起毛は吸湿性が低いのでおすすめしませんが、座ったまま作業することが多い方や冷え性の方には裏起毛のアンダーウェアはおすすめです。
トップスには、ハイネックやVネック、Uネック、クルーネック(丸首)などがあり、選ぶ服装に合わせて選べます。
ボトムスでは、ズボン下(タイツ)があり、好みの長さに合わせて選べます。暖かさ重視ならば10分丈(くるぶし丈)が良いでしょう。ズボン下(タイツ)は一度履くと暖かさから手放せないアイテムとなる方も多いアイテムです。冬用のパンツを持っていなくてもズボン下(タイツ)があれば暖かく過ごしやすいでしょう。
裏起毛のデニム
カジュアルアイテムの定番アイテムジーンズも、裏起毛加工されたものが多く出ています。ジーンズは風を通しにくい素材ではありますが、保温性がないので裏起毛加工されたジーンズだと秋や冬場も快適です。
ちなみに、裏起毛と言ってもボアやベロア調、裏シャギーというような表示がされる場合がありますが、厳密に言うとそれらとは種類が異なります。裏側の加工の仕上げの違いなので、大きくは異なりませんが、いずれも暖かさが得られるという点では同じと言えます。
ストレートやワイドなどシルエットも豊富です。カラーも定番のブルーやディープブルー、ホワイトなどがありますので好みに合わせて選んでみましょう。
まとめ
今回、裏起毛の構造について、混同されやすい裏毛との違い、裏起毛と裏毛の向く季節、取り入れ方、メンズにおすすめの裏起毛アイテムなどについて詳しく紹介&解説をしてきましたがいかがでしたでしょうか。裏起毛アイテムをコーディネートに組み合わせれば、ニットとは異なる程よいハリ感のある着こなしを目指せます。ニットよりもカジュアルに、着心地良くヘルシーに、そんな着こなしをしてみたい方におすすめです。今回の記事が、メンズ向け通販サイトや紳士服専門店での上手なお買い物のヒントになれば幸いです。