ハリスツイードの名は良く聞いても、ドネガルツイードってなに?と思われる方は多いかもしれません。ドネガルツイードは鉛筆で突き刺して穴を開けてしまったとしても元に戻ると言われるほど、耐久性のある高級ツイードとして知られています。今回は、ドネガルツイードのドネガルとはなにかというところから、ドネガルツイードの歴史、特徴、着こなし方などについて詳しく解説&紹介をしていきます。
ドネガルツイードとはなんだろうか
聞き慣れないドネガルとはアイルランドの地名が関係しています。産地やドネガルツイードが誕生した当時の背景などに触れながら紹介します。
ドニゴール州のツイード
ドネガルツイードはアイルランドのドニゴール地方でつくられているツイード生地です。よって、ドネガルツイードと呼ばれるほかにも「ドニゴールツイード」とも呼ばれています。地名はドニゴールなのに、なぜドネガルツイードと呼ばれるかについては、ドネガル川に関係しています。
ドネガル川の水は軟水です。ロンドンなどイングランド中部は硬水であり、イギリスの北部であるスコットランドなどは軟水地帯が多くなります。つまり、ツイード生地の産地としても知られる地域は軟水が多く流れる土地なのです。アイルランド北西部も軟水地域があるため、ツイードなどの洋服生地をつくるのに適していました。
軟水という水質は安定した染色性や風合いを作り出すために重要です。洋服生地をつくる際には水を多く使用する工程が発生します。ですから、ドネガルツイードは、ドネガル川の軟水という水質によって誕生したとも言えるでしょう。
ドネガルツイードは4大ツイードの1つ
ツイードには「ドネガルツイード」を含めた4つのツイードが存在しています。ドネガルツイードのほかには、「ハリスツイード®」、「シェットランドツイード」、「チェヴィオットツイード」があり、それぞれで重さや質感の違いがあるものの、暖かさや丈夫さは共通した特徴となっています。
ドネガルツイードの歴史
ドネガルツイードの歴史は古く、160年近く前に誕生しました。その頃のドニゴール地方の背景を含めてドネガルツイードの歴史を紹介します。
ドネガルツイードは1866年誕生
ドネガルツイードは、1866年に誕生したマギー・オブ・ドネガル(MAGEE OF DONEGAL)社の生地です。現在、マギー・オブ・ドネガル社と言えば、ドネガルツイードを代表する織物メーカーとして知られています。
発祥の地であるドニゴール地方のあるアイルランドは、1801年にイングランドに併合されてから1920年のアイルランド統治法によって北アイルランドが1921年に分権政府として成立した事情があります。素朴な印象が残るドニゴール地方を訪ねると、当時の面影を思わせる歴史を感じられるでしょう。
ドネガルツイードと社会的な出来事の直接的な関係はないものの、アイルランドの人口が2割強も減少することになった大飢饉後に設立されたマギー・オブ・ドネガル社の生地として、ドネガルツイードは当時の社会情勢を反映する素朴で丈夫、安心できる暖かさもある生地誕生に結び付いたのかもしれません。
鼻をすするのはNG
アイルランドやイギリスでは人前で鼻をすするのはマナー違反。マナー違反をしないためにも、しっかりと暖かさをキープできる服装が必要です。もしかしたら、そのような理由からもドネガルツイードが長年、愛用される理由の1つになったかもしれませんね。
ちなみに、生地の厚みはカラーによっては厚みや柔らかさが変わるものの、おおよそ1ミリ前後で中肉地に分類されています。暖かさと動きやすさのバランスが良いと言えるでしょう。
ドネガルツイードの特徴は?
ドネガルツイードにはどんな特徴があるのかについて詳しく見ていきましょう。
耐久性
鉛筆で刺して穴を開けても戻るくらい丈夫、と現地で言われるほどの耐久性があります。長持ちすることから一世代だけでなく三世代に渡ってかつては受け継がれていたと言われています。ちなみに、袖ボタンは代々ジャケットを受け継ぐために生まれたデザインだとされており、大事なジャケットを長く着られるように考えられたのが由来となっています。丈夫なツイード生地は、まさに世代で受け継げる洋服として重要な素材でもあったのです。
自然感
ドネガルツイードはネップと言われる糸の塊のような節がある糸を使用して織られています。そのため、生地表面にネップが現れると表情豊かな生地感になるのが特徴です。
自然な風合いでナチュラル感が大きな魅力です。暗いカラーだけでなく明るいカラーが入ったものなど種類も多くあります。紳士服だけでなく女性のワンピースなどにも使われるなど性別や年代問わず人気です。
割と軽い
ドネガルツイードは、ドネガルツイード自体にも生地感の違いがあるため一概に言えませんが、割と軽さがあるツイード生地が見られるのも特徴の1つです。4大ツイード生地の中でも最も有名なハリスツイード®は、平織りと綾織りのどちらも織られていますが、厚さが出るためしっかりとした仕上がりになります。
一方、ドネガルツイードは平織りで織られているため、ハリスツイード®生地のようなしっかりとしたツイード生地と比較した時に、生地の厚さによる差から重量にも影響を及ぼしていると考えられます。種類があるので、実際に手にとって比べてみるとより分かりやすいでしょう。
ドネガルツイードの着こなし方
それでは、ドネガルツイードの着こなしはどう着るのが良いのでしょうか。おすすめの年代や季節などについて説明します。
ドネガルツイードがおすすめの年代
ズバリおすすめの年代は………全ての方です。年代問わず取り入れられます。ネップ(節)がある特徴的な生地表面から落ち着き過ぎず、かといって華美になり過ぎない味わい深い着こなしを目指せます。
温かみのあるカラーバリエーションも魅力で、着るほどに身体に馴染むのもこなれ感あるスタイリングにピッタリの生地と言えるでしょう。
ドネガルツイードのおすすめ季節
次におすすめの季節ですが、秋冬がメインであるものの冷えを感じやすい春先も使えます。季節感が出る生地感ですので、ジャケットやベスト、パンツなど組み合わせや単体で取り入れると良いでしょう。ドネガルツイードはしっかりとした生地なので、寒い季節も温かい空気を逃がしにくい特性が役立ちます。
ドネガルツイードのカラーバリエーション
ドネガルツイードは、素朴な色味が魅力です。クラシカルな見た目にしたい時、落ち着いて見せたい時にピッタリのカラーバリエーションです。暖色系カラーでもどこか懐かしい雰囲気の色味であるため、普段は選ばないような暖色カラーであったとしても自然と全身のコーデに馴染ませやすいでしょう。

ドネガルツイードのメンズおすすめコーデ
ドネガルツイードのアイテムを使ったメンズにおすすめのコーデについて紹介します。
ドネガルツイードのジャケット
ジャケットは人の視線がいきやすいアイテムなので、シーンや好みに合わせてカラーも選ぶと良いでしょう。ガッチリ体型の方でも適度なゆとりのあるシルエットで、スッキリ見せも狙えます。また、芯地のほかパットを省くことで肩回りもゴワゴワせず動きやすくなり快適です。
スタンダードなスタイリングならば、ホワイトシャツにグレーのドネガルツイードジャケットにダークトーンのネクタイを合わせると、違和感なくスタイリングしやすくなります。
少し、華やかな印象にしたい時は、ドネガルツイードのジャケットの中にワントーン明るいカラーのハイゲージタートルニットを合わせるのもおすすめです。ネクタイをしない分、薄手のマフラーをスカーフのようにドネガルツイードのジャケットの中にインすると洒落た印象に。
ドネガルツイードのパンツ
パンツにドネガルツイードを取り入れるならば、ワイシャツをシンプルに合わせるだけで、すぐにスタイリングが可能です。気になりやすい腰回りやお腹周りは、ハリ感のあるドネガルツイードならば、キレイに見せやすいのも良い点です。お尻の丸みに適度にフィットした着心地を得られます。
ドネガルツイードのパンツが際立つように着こなしたい場合は、トップスにシックなブラックなどの締まるカラーを組み合わせるとパンツが映えます。パンツはツータックにすると、クラシカル感と動きやすさのどちらも得られるスタイリングになります。
ドネガルツイードのコート
ドネガルツイードをコートで取り入れる場合は、ジャケット自体をアウターとして着ることもできますが、ステンカラーシルエットやチェスターシルエットの本格的なアウターで取り入れるのもステキです。オンでもオフでも合うスタイリングが目指せます。
季節感のあるチェックパターンなどもカジュアルなシーンにマッチ。ドネガルツイードのネップ(節)が冬のコーデにスパイスを与えてくれます。
オンではネイビーの単色やチェックバターンなどを選び、大人紳士の品格を得られるスタイリングにし、オフではベージュ系のライトカラーをメインにスタイリングするとフレッシュな雰囲気が得られます。
まとめ
今回、ドネガルツイードのドネガルとはなにかというところから、ドネガルツイードの歴史、特徴、着こなし方などについて詳しく解説&紹介をしてきましたがいかがでしたでしょうか。アイルランドの老舗メーカーの生地であるドネガルツイードは、暖かさとソフトな着こなしを楽しめます。ツイード生地をコーデに取り入れてみようと思ったらぜひ、ドネガルツイードも候補に挙げてみてはどうでしょうか。今回の記事が、メンズ向け通販サイトや紳士服専門店での上手なお買い物のヒントになれば幸いです。