ツイード素材は秋や冬にピッタリの季節感ある生地です。主にスーツやジャケット、アウターなどでもよく見かけることでしょう。暖かいだけでなくエレガントな着こなしを目指せるので、メンズのキレイめな着こなしにマッチします。ハリスツイード®は、その中でも注目を集めるツイードです。そこで今回は、ハリスツイード®とはなにか、歴史や特徴、ツイードとの違い、お手入れ方法について詳しく紹介&解説をしていきます。
ハリスツイード(HARRIS TWEED)とはなんなのか
ハリスツイード®は、ここ数年でよく見聞きするようになったと感じる方も多いかもしれません。ハリスツイード®はなぜ、多くの方から支持されているのでしょうか。まずは概要について説明しましょう。
スコットランドのツイード生地
ハリスツイード®は、北に位置するスコットランドのツイード生地です。ちなみに、ツイード生地とはウールを主体にして織った厚みのある生地で、独特な風合いが特徴です。
コートや手袋に使用されている
チェスターコートなどのアウター、スーツ、ジャケットなどに使われるほか、手袋などの小物アイテムにも使用されています。近年では、リーズナブルなハリスツイード®が販売されている点から、目にする機会も増えているでしょう。タグが目印です。
ハリスツイード®の歴史
ハリスツイード®誕生の歴史について見てみましょう。
誕生は100年以上前
ハリスツイード®の誕生は19世紀だと言われています。ハリスツイード®の発祥地はイギリスの北部にあるスコットランド。スコットランドは独特な文化を持つことでも知られ、気温は冬ともなると2〜7℃、0℃以下になることも珍しくない環境です。ちなみに夏であっても12〜15℃なので、かなり寒冷の地だということが分かるでしょう。
典型的な西岸海洋性気候で雨が多く、サアッと振るような雨ではなく横殴りの雨となるため、衣服もしっかりとしたものが求められる環境です。
発祥の地を厳密に言うと、スコットランドでも北部にあるアウターヘブリディーズ諸島の島々が発祥地となります。そのため、保温性に優れた衣服をいかに作り出すことかが大事でした。
もとは漁師の防寒着
寒い地だからといって漁師がいないわけではありません。むしろ、漁業の盛んな地域であり漁師もたくさんいました。漁師の体温を奪わずに耐久性のある生地が必要とされ、ハリスツイード®が誕生したのです。
ちなみに、現在でも漁業は主産業の1つです。盛んに放牧なども行われていたことから、織物業の産地としても知られています。
タータンチェックの登場
スコットランドは独自の服装や文化を持つ地域としても知られています。チェック柄のスカートのような布地を腰に巻き付けてバグパイプを拭いている男性の姿を目にしたことがあるでしょう。チェック柄のスカートのような布地は、スコットランドの民族衣装であり、チェック柄は家紋を示すものでした。
ある時、ダンモア伯爵夫人がタータンチェックをツイード生地に織り込むように指示をしたことからまわりの富裕層にも広まっていったとされます。チェック柄の持つカジュアル感が、当時の貴族層を中心に狩猟や釣りのアウトドアシーンに合うと、受け入れられたのです。
ダンモア伯爵夫人はすでに伯爵が亡くなっていたこともあり、ハリス島の主産業にしようと積極的に広めたことも有名になる理由となりました。
ハリスツイード®の特徴
次に、ハリスツイード®の特徴について解説していきます。
高品質生地
ハリスツイード®は、ツイードの中でも最高のクオリティであると言われています。職人が代々受け継がれてきた技術を駆使することで、ハリスツイード®生地はようやく出来上がります。その手間と技術から、ハリスツイード®は高品質生地だと言われています。
厳格な品質基準
ハリスツイード®には厳格な品質基準があります。ハリスツイード®の人気と共に、さまざまなアイテムで見られるようになったタグですが、タグがつけられるには、下記の基準が定義として定められています。
・アウターヘブリディーズ諸島で生産されていること
・ピュア・ヴァージンウールを使い、生地作成まで全てを島内で行う
・島内の職人による手織りであること
これらの条件を満たしたツイードだけが「ハリスツイード®」として認められています。リーズナブルなハリスツイード®タグがついたアイテム類は、一部分にハリスツイード®を使用している場合が多く、たびたび問題視されるところでもあります。
高い防寒性
ハリスツイード®の生地は厚くて重量があるのが特徴です。1平方メートルあたりの目付(生地の重さ)が490gだとされています。一般的に冬コートに適した生地の重さの基準は450gと言われていますから、ハリスツイード®の生地はしっかりとした厚みで高い防寒性が得られると言えるでしょう。繊維内に空気がたくさん含まれている点も暖かさを感じる理由です。
撥水性
ハリスツイード®の素材は羊毛です。紡績する際に羊毛に含まれる油分を抜く作業を行わないことで、生地内に油分が残って水を弾きます。完全防水ではなく、弱撥水性ではありますが、かつての漁師の仕事服としてはありがたい特性だったでしょう。時間の経過と共に油分は自然と抜けて、風合いある生地になります。
耐久性
生地が厚手であり擦れにも強いことから、生地の耐久性は非常に高いです。手入れをすることで20年以上も使用できると言われています。
発色性
ツイード生地自体が発色性の良い生地だと言われています。糸を染色した後に織り上げていき、起毛感も少ないことからはっきりとした色合いが表現しやすいのです。ハリスツイード®は染色や紡績、織り上げまで一括して島内で行うことで、顔色が明るく見える鮮やかな生地を生み出しています。
ハリスツイード®とツイードの違い
ここで、ハリスツイード®と一般的なツイードの違いについて整理してみましょう。
発祥地と産地の違い
ハリスツイード®と呼ばれるには、アウターヘブリディーズ諸島内でつくられなければならないという定義があります。よって、産地が違えばそのほかの地域でつくられたツイードはハリスツイード®にはなりません。簡単に言うと、つくられた地域によって工程や原料なども変わり、呼び方が異なるのです。
三大ツイードがある
アウターヘブリディーズ諸島以外の有名なツイード産地は、ハリスツイード®と同じくスコットランドとアイルランドにあります。ハリスツイード®と同じスコットランドにあるのは「シェットランドツイード」であり、軽量で保温性が特徴です。もう1つは「ドネガルツイード」といい、温かみのあるカントリー感が特徴となっています。
ハリスツイード®のお手入れ方法
きちんとお手入れしながら着れば20年以上も持つと言われるハリスツイード®のお手入れの仕方について説明します。
日々のお手入れはブラッシング
ツイード素材はしっかりとしている分、生地間にホコリが溜まりやすいので、ブラシで汚れをかきだします。繊維の流れと逆にブラシを動かすと汚れをかき出しやすくなります。ブラシは、豚毛のウール専用ブラシがおすすめです。豚毛は丈夫なのでブラッシングをするうちに毛が寝てしまうといったことも防ぎやすくなります。
1シーズンに1回クリーニングを
汚れがついたままクローゼットで収納するのはカビの原因に。シーズンが終わったらクリーニング店に出すようにしましょう。裏地が付いているものもクリーニング専門店ならば、洗いから乾燥までしっかりと対応してもらえます。
自宅で洗うなら洗濯表示に従う
自宅で洗う場合は、洗濯表示にしたがって洗濯機洗いまたは、手洗いをしましょう。洗濯機でも手洗いでも使用する洗剤は中性洗剤を使用します。洗浄力が弱めな分、生地へのダメージも防ぎやすくなります。
縮みやすくなるので水温は30℃程度までにします。高温になると生地が縮む原因となるためです。脱水は30秒ほどにして、形を整えて陰干しをしましょう。十分乾いてから収納します。

ハリスツイード®の秋冬ファッションコーデ
ハリスツイード®を使った秋冬のファッションコーデについて紹介します。
ブラックウォッチ手袋×ブラックウールコート
ブラックウォッチ手袋にブラックウールコートの組み合わせは、ニシンの骨を意味するヘリンボーン柄がクラシカルな雰囲気になり、落ち着いたメンズコーデにマッチします。アウターをブラックにすることで、ハリスツイード®の手袋をアクセントにした着こなしになります。
チャコール手袋×ブラックウールコート
チャコール手袋とブラックウールコートの組み合わせは、ブラックコートのカラーに合うように、ハリスツイード®の手袋もブラックに近いチャコールを選びましょう。モノトーンコーデのシックな印象になります。色数を減らすことで、年代関係なくシンプルにコーデを決めやすくなります。
まとめ
今回、ハリスツイード®とはなにか、歴史や特徴、ツイードとの違い、お手入れ方法について詳しく紹介&解説をしてきましたがいかがでしたでしょうか。ハリスツイード®は、保温性が高く丈夫であり、手入れをすることで長年も愛用できる高品質アイテムです。紳士に合うきちんと感ある生地なので、ビジネスシーンやカジュアルシーンにぜひ、取り入れてみてはいかがでしょうか。今回の記事が、メンズ向け通販サイトや紳士服専門店での上手なお買い物のヒントになれば幸いです。