スーツの定番生地としても使用される「ウール」は、空気を含み保温性も高く秋や冬にピッタリの素材です。「ウール」は、身近にある素材で種類も多く、素材の特徴や種類などについて知ることで普段のスーツコーデもさらに快適で好みに合ったコーデをしやすくなります。そこで今回は、スーツの素材にも使われる「ウール」の構造や織り方・種類・洗濯方法などについて詳しく解説&紹介していきます。
スーツ生地の「ウール」の特徴とは
まず、「ウール」とは主に羊の毛を使用した素材になります。多くのアパレル製品に使用されており、メンズのスーツやセーター・カーディガンなど多くの洋服アイテムに見られます。
羊の毛の紡ぎ方によって糸の太さも異なり、通常スーツに良く使用される「ウール」糸には細番手の細い「ウール」糸を使用しているため、スーツを着た時になめらかで軽やかな着心地が得られます。また、織り方によって通気性などや生地表面の表情も変わるなど、機能面や見た目に違いが表れます。
「ウール」生地に使用される2種類の糸
「ウール」素材を使ったスーツには、糸の紡ぎ方によって異なる2種類の糸が主に使用されています。順に見ていきます。
梳毛糸(そもうし) |ツヤが感じられる糸
梳毛糸(そもうし)は、短い羊毛を除いた細くて毛足の長い原毛を一定方向にそろえて水平にねじって作った糸です。そのため、糸の太さが均一に出やすく、仕上がりもなめらかでツヤのある質感を生み出せます。
紡毛糸(ぼうもうし) |ふんわりとしたやわらかい糸
紡毛糸(ぼうもうし)は、短い羊毛を含めた原毛を繊維の流れに垂直にねじった糸です。ねじる際に短毛がいろいろな方向に向くことで、ふんわりとしたやわらかさを活かした糸ができます。保温性も高く起毛加工に向いている糸です。
「ウール」生地の代表的な2種類の織り方
次に、「ウール」生地の織り方についての種類について紹介します。「ウール」糸の代表的な織り方を順に説明していきます。
平織(ひらおり) |夏のスーツ生地におすすめ
平織(ひらおり)は、経糸と緯糸を交差させながら織るオーソドックスな織り方で、左右対称の織り目が特徴です。丈夫で摩擦に強く、表面と裏面の違いが出にくくサラリとしており、通気性に優れているのもポイントです。
夏のスーツ生地に向いており、薄手でシャリっとした質感であるトロピカル生地やシワになりにくい特性があるフレスコ生地は平織の代表的な生地として挙げられます。
綾織(あやおり) |冬のスーツ生地におすすめ
綾織(あやおり)は、経糸と緯糸もしくは緯糸と経糸が2本分ずつ交差を繰り返した織り方で、左右非対称に仕上がるのが特徴です。シワもできにくくツヤ感があります。
糸が平織に比べてゆとりができる分、空気を含みやすく保温性に優れており、厚みを持たせた生地をつくることができます。そのため、冬のスーツ生地に向いている織り方です。
羊の種類による「ウール」糸の特徴
「ウール」の原料である羊の生息地域によって、「ウール」の毛質や色なども異なります。以下にて羊の種類による「ウール」糸の特徴について順に紹介していきます。
メリノ|人気高級「ウール」
メリノは、オーストラリアやニュージーランドに多く生息するメリノ種の羊です。通気性と保温性が高く繊維が細かいため、ニット生地など着た時に肌にチクチクした独特な感じがしにくく、高級ファッションウェアとして“メリノウール”は人気です。
タスマニア|不純物が少ない白さが魅力
タスマニアは、オーストラリアのタスマニア島に生息しているメリノ種の羊で、タスマニアの毛を使用した「ウール」を“タスマニアウール”と呼びます。繊維が細く、子羊の毛を使用したものは、カシミヤレベルのやわらかさと言われ、不純物が少なく白い美しい毛が魅力です。
ラム|やわらかく暖かい
ラムは、メリノ種の生後5〜7ヶ月前後の子羊を指し、ラムの毛のみを使用した「ウール」を“ラムウール”と呼びます。メリノウールに比べて繊維が細かく、肌への刺激になりにくい質感です。保温性も高く、身体になじみやすいやわらかさを持ちます。セーターやカーディガン・マフラーなど身近なウェア素材に使われています。
シェットランド|厳しい環境で育まれるソフトな質感
シェットランドは、イギリスの寒冷地であるシェットランド諸島に生息している北欧系の短尾類である小型の羊です。表面は弾力やハリがある毛、内側にはやわらかい毛を持ちます。内側のやわらかい毛を使用した製品が人気です。
ゴットランド|灰色・グレー色でシルク並みの質感
ゴットランドは、スウェーデンのゴットランド島で飼育されている羊です。灰色・グレーの毛色とシルクのような手ざわりが特徴でツヤが感じられます。毛以外にもシープスキンの原料として知られています。
コリデール|ツヤのある質感が魅力
コリデールウールは、メリノ種とリンカーン種(リンコルン種)の交配により生まれた羊です。日本でも飼育されており、食用としても需要があります。ツヤがあるやわらかい質感が特徴で、毛糸の原料としても使用されています。
ブルーフェイスレスター|耐久性と保温性に優れる
ブルーフェイスレスターは、チェビオットとイングリッシュレスターを掛け合わせたイギリス産の羊で厳しい環境に耐えられるように改良され産み出されました。ツヤがありクリンプと呼ばれる繊維が波打つような癖のある長い毛が特徴です。耐久性があり保温性に優れます。
ロムニー|弾力性がありツヤがある
ロムニーは、イギリス原産のロムニーマーシュ地方に生息する羊で、さらに改良されたロムニーはニュージーランドに生息する羊の大半を占めると言われています。ツヤがあり毛が長く、弾力性があるのが特徴です。
チェビオット|しっかりとしたハリのある質感
チェビオットは、イギリスとスコットランドの境目にある山岳地帯を原産とする羊です。厳しい環境に耐えうるしっかりとした弾力性のある毛質が特徴です。軽さがあり疲れない着心地が魅力です。
「ウール」生地のおすすめ季節
「ウール」は、秋や冬のイメージがあると思いますが、生地の織り方によって1年中着用できるため、目的や好みのコーデに合わせて取り入れられます。保温性が得られる秋冬は特にベストシーズンとなっています。
「ウール」生地のメリット&デメリット
スーツの素材としても使用される「ウール」にはメリットがあればデメリットとなる点もあります。どのような点について注意が必要かなども含めて解説します。
メリット
「ウール」には保温性や通気性があり、蒸れにくく消臭効果も期待できるため、秋冬のコーデアイテムとして特に優秀です。ファッション的にも上品で落ち着いたコーデからカジュアルなコーデまで合わせやすく、年代問わず使えるのも嬉しい点です。トラッドスタイルを好む方に特におすすめのスーツ素材と言えるでしょう。
デメリット
「ウール」は繊維が絡まりやすく毛玉ができやすいのと縮みやすい傾向があります。独特なチクチク感が気になる方もいるでしょう。また、天然繊維であるために虫に食われるリスクもあります。洗濯方法である程度改善を目指すことが可能です。洗濯の具体的な方法については次項で詳しく解説していきます。
「ウール」生地の洗濯方法
基本的に手洗いが推奨されますが、まずは洗濯ラベルを確認します。“ウールマーク”認証があり、洗濯可能な表示がある「ウール」製品ならば、洗濯機で洗うことも可能です。スーツなど型崩れが心配な洋服アイテムについては、クリーニング専門店にお任せするのもおすすめです。
洗濯する前は、食べこぼしなどの汚れもチェックしておき、汚れが目立つ部分は洗剤の原液を少し生地に馴染ませておくと汚れを落としやすくなります。
手洗いする場合は、ドライクリーニング専用洗剤(中性洗剤)を使用し、生地にダメージを与えないようにやさしく押し洗いをしていきます。あらかじめ、洗剤は洗面器や浴槽などに水を溜めて溶かしておき、均等に洗剤が染みこむようにしておきます。ちなみに、「ウール」は動物繊維なので、体温よりも少し低い30℃くらいに調整してあげると汚れも浮き上がりやすくなります。
洗濯機で洗える場合は、弱モードなどデリケート素材の洗濯コースを選ぶとダメージが少なく洗えます。手洗いと洗濯機洗いの場合のいずれも仕上げは柔軟剤を使用して繊維同士が絡むのを防ぎましょう。毛玉防止やふんわりとした質感をキープしやすくなります。脱水も30秒〜1分以内の短時間に留めます。
「ウール」生地の干し方
水を吸った「ウール」生地は重みがあるため、生地が伸びやすい状態です。そのため、ハンガーに掛けて干すのではなく、平らにした状態で干します。平干し専用のハンガーもしくは、バスタオルを使って平らに干せるように簡易的なハンガーを作って干すと伸びによる型崩れを防げます。
干す場所は日光が直接当たる場所ではなく、風が通る日陰がベストです。直接日光に当ててしまうと、紫外線による変色や退色するリスクがあるので注意しましょう。
スーツ以外の「ウール」生地を使用したアイテムなど
「ウール」素材のスーツやジャケット&スラックスに、組み合わせて着られるセーターやカーディガン・ベスト以外にも「ウール」素材を使用した多くのアイテムがあります。
マフラーやストール・手袋・靴下などの小物にも使われるほか、ファッション以外にも羊毛布団やカーテン・カーペットなど「ウール」を使用したさまざまなアイテムが暮らしの役に立っています。
まとめ
今回、「ウール」生地の特徴や種類・注意点・洗濯方法などについて詳しく解説と紹介をしてきましたがいかがでしたでしょうか。「ウール」は生地や織り方次第で季節を問わずに幅広い年代の方が取り入れやすい天然素材です。通気性や保温に優れることから秋冬はもちろん、織り方を変えてサラリとした質感で春夏にも快適な「ウール」ライフを送ることができます。ぜひ、メンズ服の通販サイトや紳士服店で「ウール」素材を使用したスーツの購入を検討してみてはいかがでしょうか。今回の記事が参考になれば幸いです。