「コードバン」という革の種類についてご存じでしょうか。レザー好きの方には熱心な「コードバン」ファンも多く見られコードバン専門店もあるほどです。あまりレザー製品にこだわりが無い方も “名刺入れ”や“キーケース”・“コインケース”などに使用されていると聞くと、身近に感じやすいのではないでしょうか。スーツ姿にもマッチしやすく、紳士服専門店で見かけたことがあるでしょう。そこで今回は、“革のダイヤモンド”や“キングオブレザー”とも呼ばれる「コードバン」について、「コードバン」の歴史や特徴・お手入れ方法などについて詳しく解説していきます。
「コードバン」とは“馬の革”
「コードバン」は、馬の革です。馬の革と言っても農耕馬のお尻の部分に限定した馬皮を素材としており、お尻の皮の内部にある“コードバン層”を削り出して採取したものが「コードバン」となります。薄い軽い素材でありながら硬く丈夫です。
「コードバン」の歴史と産地について
「コードバン」が広まって愛用されてきたのには、かつて馬が現在の車の代わりに使われていた歴史が関係しています。車が発達する前は、馬が主な移動手段であり、馬は非常に身近な存在でした。そのため、馬を素材とした革も日常的な素材となっていたのです。
また、交通手段として使用するだけでなく、馬肉を食する文化も馬を素材とする製品の要因になります。ポーランドでは昔から馬肉を食べる文化が根付いていたため、馬革の産地として世界に知られています。
ちなみに、馬肉を食べる文化は日本を含めたアジアの一部、フランスなどの欧州など世界各地でも見られます。食分化がある地域は、無駄にすることなくさまざまな製品に加工されていました。
熟練した技を必要とする「コードバン」の製造方法
「コードバン」の製造方法は熟練した技が必要となり、皮の状態から革へと加工する技術を持つ“タンナー業者”により生み出されてきました。製造工程の始めは、原皮を腐らないように“なめし”の工程をすることにより加工しやすくし、コードバン層ではない部分を専用の刃で削ぎ落とす工程を行っていきます。
ツヤを出してしなやかさを得るために、オイルを馴染ませながら余分な油分や水分を取り除いて伸ばす作業をした後、ゆっくりと自然乾燥させていきます。伸ばしの作業や削り出しの工程を数度繰り返すことでようやく「コードバン」が完成します。
ちなみに、コードバン層は1〜2mm前後といわれているため、いかに繊細な作業であるかが感じられるでしょう。
「コードバン」は高級な希少素材
「コードバン」作成の工程でいかに手間がかけられ仕上げられているかを知ると、いかに高級素材であるかが分かるでしょう。仕上げまでの工程も高級品となる理由の1つではありますが、「コードバン」は以下の点からも高級素材とされています。理由について順に見ていきます。
1頭から採れる量が少ない
馬のお尻部分の限られた皮を使用する時点で、1頭から採取できる素材は限られてきます。素材となる農耕馬自体の生産量も少なくなってきており、牛や羊と比べると素材の入手のしにくさから価格も高価になります。
タンナーの数も少ない
「コードバン」を製造するタンナーも少ないことも高級素材となる理由です。日本では兵庫県の姫路市や千葉県の柏などのタンナーが知られており、各工房で作られた「コードバン」は高級素材として扱われ、有名ブランドでも使用されるほどの人気素材となっています。
「コードバン」の経年劣化(経年変化)について
レザー製品の醍醐味でもある、使い込むことによる光沢感はオシャレな大人のメンズアイテムとしても欠かせないでしょう。年数を経て得た独特の風合いは、財布やキーケースであれば手に、靴であれば自然と足に馴染み、味わいを楽しめます。年数を重ねるごとに自然なツヤ感を楽しめます。
また、「コードバン」の表面加工種類によって、テクスチャーが変わってくるのもポイントです。特にオイルコーティングされている加工の場合は、ツルリとした光輝くツヤ感を得られます。よりこなれた印象にしたい場合は、オイル加工をしないナチュラルなタイプを選ぶと良いでしょう。
「コードバン」の基本的な見分け方
多くのレザー製品がある中で、どれが「コードバン」か判別するのは難しいかもしれませんが、実は見分け方のコツがあります。「コードバン」の特徴を活かした判別しやすい点について2つ挙げます。
見分け方①“白い粉”が付着している
“白い粉”は『ブルーム』とも呼ばれ、オイルを浸透させた仕上げの「コードバン」の証でもあります。革の繊維内に浸透していた油分が表面に白く浮き出てくる現象で、一見するとカビが生えたようにも見えますが、革の中にある油分が温度や湿度の変化で表面に出てきているだけなので、乾拭きしてブラシで馴染ませれば問題ありません。
見分け方②シワの入り方
次に“シワ”が目安になります。「コードバン」を使用した靴だと分かりやすいのですが、靴は履いているうちに足の動かす部分に合わせて自然にシワが入ってきます。シワが入った時にいくつもシワが入るのではなく、大きくシワがシンプルに入っている場合は「コードバン」である可能性が高くなります。なめらかな質感により、シワが入っても「コードバン」であれば細かくシワが寄ることはまず考えにくいでしょう。
「コードバン」と牛革との違い
数多くある革製品の中でもメジャーである牛革とは何が異なるのでしょうか。分かりやすい違いとしてまずは“強度”が挙げられます。「コードバン」は、牛革に比べておよそ3倍の耐久性があると言われており、牛革を越える強度を持ちます。
牛革自体も革が硬く型崩れが起きにくい特徴を持っていますが、「コードバン」は丈夫でありながら見た目も牛革を越えた輝きを兼ね備えています。表面を見ると「コードバン」の方が、キメ細くツヤめいて見えるので判別しやすいでしょう。
ちなみに、某有名ランドセルの価格を比較した場合、牛革のランドセルが8万円ほどに対して「コードバン」のランドセルの場合はなんと15万円の価格がつけられており、約2倍の開きが見られるほどの価格の違いが見られます。なめらかな手触りと“ダイヤモンド”と呼ばれるようなツヤ感はまさに“キングオブレザー”なのです。ツルリとした質感を好む方に「コードバン」はピッタリと言えるでしょう。
「コードバン」のお手入れ・ケア方法
「コードバン」のお手入れ方法を知ることで、なめらかでツヤ感のある「コードバン」の維持がしやすくなります。基本のお手入れと濡れてしまった時の対処方法などについて見ていきましょう。
基本のケアは乾拭きやブラッシング
基本的なケアは、乾拭きやブラッシングをしてあげることです。乾拭きやブラッシングをすることで汚れを落とし、ツヤを維持しやすくなります。乾拭きする時は、摩擦による傷つきを防ぐためにもやさしいタッチで拭きましょう。
ブラシは柔らかくコシのある同じ馬毛を使用したブラシがおすすめです。馬毛ブラシは歯ブラシにも利用されるなど、歯のエナメル質を傷つけにくいことも知られています。復元性もあるのでへたりにくいのもポイントです。
さらに、仕上げのツヤ出し用に羊の毛を使用した天然ムートングローブがあるとより良いでしょう。繊細な子羊の毛を使用しているため、革の表面を傷つけにくく、どの方も扱いやすいのがメリットです。乾燥が見られる場合は、革の様子を見ながら油分を専用クリームで足してあげましょう。
濡れてしまった場合の対処
「コードバン」は水に弱い性質を持ちます。そのため、雨などに濡れてしまうと革の内部まで浸透してしまう恐れがあります。外で思わぬ通り雨などにあってしまった場合、帰宅するまでケアが遅れてシミになってしまうこともあり得るでしょう。浸透したままの状態にしておくと、革の内部でふくれ上がり水ぶくれの原因になってしまいます。
濡れてしまった場合は、まずは水分を取り除くためにやさしく拭き取りましょう。ちなみにゴシゴシとこするのはNGです。また、早く乾かそうとしてドライヤーなどを使うのも避けましょう。急激に革に変化を与えるのは、革の縮みやひび割れの要因となります。
水分を拭き取ったら、風通しの良いところで陰干しして乾燥させます。乾いたら汚れを馬毛ブラシで払い、革専用のクリームで油分を与えて保護します。万が一、水ぶくれになってしまった場合はクリームで保護した後、革専用スティックで圧をかけながら膨らんだ部分を押し込むことで目立ちにくくさせられます。
不意の雨などで「コードバン」を濡らさないためにも、あらかじめ防水加工を施しておくのも良い方法です。雨だけでなく、夏場など汗をかきやすい時期の汗対策にも有効です。汗には水分のほかに塩分やアンモニアが含まれるため、革の変色などの原因となるので、普段から汗が染みやすいお尻のポケットなどにお財布など入れないなどといった配慮もするようにすると良いでしょう。
傷がついてしまった場合は
ついてしまった傷を持ち味とすることもできますが、気になる場合は浅い傷の状態であれば、自力で目立ちにくくすることも可能です。まずは、普段のお手入れと同じように全体の汚れと傷部分の汚れを落としておきます。次に、水分量が多い革専用クリームを少量塗りこみ、「コードバン」の繊維をほぐしていきます。事前に水分が多いクリームを塗っておくことで、後からツヤ出しなどのための油分が多いクリームを塗布した時にムラを防げます。
傷がついている部分は、革の繊維が立ち上がっている状態なので、革専用スティックで押して圧をかけていくことで革の繊維を寝かせた状態に戻し、目立っていた傷を目立たなくさせられます。仕上げに油分を補う革専用クリームを塗ると、キレイな状態を維持しやすくなります。
まとめ
今回、「コードバン」の歴史や製造方法・特徴・牛革との違い・お手入れなどについて詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか。「コードバン」ついての特徴を知ることで数多くあるレザー製品の中でもこだわりを持ったレザー選びの手がかりにすることができるのではないでしょうか。ぜひ、メンズ通販サイトや紳士服専門店でレザー製品を購入する際の参考にしてみて下さい。今回の記事が参考になれば幸いです。