ビジネスシーンやフォーマルシーンの定番ファッションであるスーツ。
それなりに着こなすだけでも十分おしゃれに見えるファッションですが、実は各パーツごとに様々な名前や役割があるのはご存知でしょうか。
今回はスーツの顔とも言われている「ラペル」について解説していきます。
ラペルの種類や役割、与える印象を理解しておくことで、スーツ選びや着こなしのコツがつかめるようになります。
ラペルとは?
ラペルとは、ジャケットのカラー(上襟)のすぐ下に位置する下襟部分のことです。
ジャケットをパッと見たときに最初に目に入る部分なので、スーツの印象を左右する重要なパーツとして位置づけられています。
ラペルにはいくつかの幅や形状があり、与える印象やふさわしいシーンも異なるため、まずはそれぞれの特徴を一つずつ覚えていきましょう。
ラペルの幅について
ラペルはジャケットのスタイルによって5〜10cmの間と数センチの幅がありますが、大きく分けて下記3つのサイズに分類されます。
- レギュラーラペル
- ナローラペル
- ワイドラペル
ここではそれぞれの特徴と、ラペルの幅の歴史について解説します。
レギュラーラペル
7.5〜8.5cm前後の一般的な幅のラペル。
トレンドの影響を受けにくい見た目で、標準的な体型の人に似合う幅です。
いつの時代も広く採用されているサイズなので、流行に左右されない定番スーツとして着るものはレギュラーラペルがおすすめです。
ナローラペル
5〜7cm前後の細いラペル。
ナローは「細い」という意味で、文字通り細身のスーツやモード系のスタイルに多く採用されている幅です。
フォーマルかつスタイリッシュな印象を与える幅なので、細身の体系の人や肩幅があまり広くない人に良く似合います。
ワイドラペル
9〜10cmほどある最も幅広いラペル。
比較的体格の良い人に似合うサイズと言われていますが、華やかさと落ち着きを両立させた印象を与えることができます。
クラシックなデザインのスーツに採用されており、70年代のファッションがリバイバルしている現代でもトレンドのひとつになっています。
豆知識:ラペルの幅の歴史
上記のようにラペルの幅には差がありますが、歴史を辿ると1970年代は10cm前後のワイドラペルが一般的だったようです。
しかし80年代に入るとファッションデザイナーがスーツ分野にも参入し、モードの世界観が広がることで7cm前後のナローラペルが登場しました。
90年代以降はクラシックとモードが入り混じり、ブランドごとに特徴が分かれていき現代の多様なスタイルが生まれています。
2020年代の現在ではレギュラーラペルやクラシックスタイルのリバイバルでワイドラペルがやや主流になっており、ナローラペルはモード系スタイルやタイトスーツを好む人の間で取り入れられています。
ラペルの形状について
続いてラペルの形状について見ていきましょう。
形が変われば見た目の印象も大きく変わるため、スーツの個性がはっきり分かれやすいポイントになります。
ノッチドラペル
最も一般的な形状で、既製品として販売されているほとんどのビジネススーツはこのノッチドラペルが採用されています。
シンプルなV字型(くの字型)の定番スタイルなのでスーツカラーや着用シーンを選ばず、常にシャープですっきりとした印象を与えることができます。
スーツ選びに迷った際にはノッチドラペルのものを選んでおけば間違いないでしょう。
セミノッチドラペル(フィッシュマウスラペル)
下襟の先が下に向かっていて均等なV字を形成しているノッチドラペルに対して、セミノッチドラペルは下襟の角度が緩やかで、やや上向きにラインが伸びているのが特徴です。
その形状が魚の口に似ていることから「フィッシュマウスラペル」とも呼ばれます。
ノッチドラペルよりも優雅な印象を与えるため、固い職業よりは個性を演出することでプラスになるようなビジネスシーンに向いています。
既成のビジネススーツではノッチドラペルが定番なので、理想の形を探している場合はオーダーがおすすめです。
ピークドラペル
ピークドは「尖った」という意味があり、その名の通り下襟が上に向かって尖った形状をしていて、上襟と下襟に隙間がありません。
元々はタキシードなどを中心に採用されていたデザインで、華やかさや上品さ、力強さといった印象が特徴なので、個性を演出したいダブルスーツやフォーマルシーン用のスーツにぴったりです。
逆にその華やかな印象からビジネスシーンには不向きとされているので、お祝い事やパーティーシーンなどで着用するのが無難でしょう。
セミピークドラペル
ノッチドラペルとピークドラペルの中間のような形状で、くの字型に切り込みが入っているものの下襟の角度は水平に近くなります。
ビジネスシーンとフォーマルシーンのどちらでも着用できますが、少し遊び心をもたせるような形状なので、個性を演出したいけどピークドラペルでは華やかすぎると感じる場合におすすめの形状です。
ローリングダウンラペル
襟の形状だけ見ればノッチドラペルと似ているデザインですが、こちらは第一ボタンのホールが反り返った状態になります。
日本語では「段返り3つボタン」などと呼ばれることもあります。
第一ボタンを留めずに着こなすローリングダウンラペルでは、上品でありながらかしこまりすぎない印象を与えることができるので、カジュアルシーンにも向いています。
クローバーリーフラペル
ノッチドラペルの先端の角が丸みを帯びている形状で、クローバーの葉に似ていることから名付けられました。
角が取れることでとても柔らかい印象になるため、レディーススーツでよく用いられるデザインで、メンズのビジネススーツではほとんど見られない形状です。
ゴージラインについて
ここまでラペルの名称や特徴を紹介してきましたが、スーツの印象を左右するもう一つの重要な部分として「ゴージライン」の高さがあります。
ゴージラインとは上襟と下襟を結ぶ縫い目の線のことで、このゴージラインの高さで見た目の印象が大きく変わります。
ゴージラインが高めの「ハイゴージ」は全体的にシルエットの縦ラインが強調されるため、スマートさやスタイリッシュさを演出できます。
逆にゴージラインが低めの「ローゴージ」では落ち着いていてゆったりとした印象になるため、肩幅を広く見せたい場合や小顔に見せたいような場合に選ぶと良いでしょう。
ラペルの幅や形状を選ぶ際には、ゴージラインの高さとの相性も意識してみましょう。
まとめ
今回の記事で紹介したラペルの名称や種類について、全て知っている人は少なかったのではないでしょうか。
ラペルの特徴を知ることで、例えば幅が広いラペルならネクタイもウインザーノットで太めに結び、細めのラペルならプレーンノットやナロータイと合わせるなど、ラペルと合わせてスーツ全体のコーディネートを楽しむきっかけにもなります。
これからはぜひラペルの形状が与える印象の違いも楽しみながらスーツを選んでみてください。